第50回 学習工学セミナー開催案内

     主題  主体的・対話的で深い学びとICTの活用
            
 私はもうずいぶん前に、私の授業を受講している名大の学生を対象に「コンピュータで学ぶ授業で教材に間違いがあったときと、教師が教える授業で教材に間違いがあったときとでは、どちらがより嫌か?」という調査をしたことがあります。みなさんは、学生は、どちらだと答えたと思いますか?私は「コンピュータの方が嫌だ」という意見が多いと予想していました。しかし、学生の答えは私の予想に反するものでした。だからといってそれは、「人間の教師の方が嫌だ」という答えでもありませんでした。学生の答えは「人間の教師のときは、それが嫌か嫌でないかは、その教師による。だから、人間とコンピュータとでどちらがより嫌だとは言えない」というものでした。そして、これは、ほぼ全員の学生の答えでした。「では、どんな教師なら嫌で、どんな教師なら嫌でないのか」を聞いたところ、それは一人一人の学生によって違っていました。

 私はこれを聴いたとき、冷や水を浴びせられた思いがしました。人間の教師は一人一人違います。そのお互いに違う教師が、一人一人違う子どもに異なる仕方で接します。それが、人間教師の価値であり力であるし、それこそが教育に豊かさをもたらすのです。そのことを、私はその時、改めて学生から教わったのです。
 
 ICTの教育利用を考えるとき、それを効率的で最適な教育のために使おうとするなら、この人間教師の良さを損なってしまいます。ICTは一人一人の教師の豊かさを支え、生かし、それを育むように使うべきです。そしてそれが、一人一人の子どもの豊かさを支え、生かし、それを育むのだと思うのです。その意味では、現在求められている「プログラミング的思考」とは、
 定式的で最適な思考のことではなく、一人一人の個性が生きた思考であるべきだと、私は考えています。
 
 さて、今年の講師には、初等中等教育の現場を対象に思考力育成のための学習環境を研究していらっしゃる、鳴門教育大学教職実践力高度化コースの泰山 裕(たいざん ゆう)先生をお招きしています。泰山先生とともに、教育の豊かさについても考えていけたらと願っています。


             学習工学研究会会長 大谷 尚
             名古屋大学大学院教授・高大接続研究センター長
             元名古屋大学教育学部附属中・高等学校校長

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